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映画感想レビュー「武曲 MUKOKU」評価ネタバレ注意『剣の達人・研吾(綾野剛)が剣道を通して己と向き合い、再生していくという話』。 #MOVIE

武曲 MUKOKU もはや圧倒どころじゃない

「武曲 MUKOKU」を映画館で見てきました。
ストーリーをざっと説明すると、ある事件をきっかけに酒浸りの生活を送り続ける剣の達人・研吾(綾野剛)が剣道を通して己と向き合い、再生していくという話です。

本作で印象的なのは、何と言っても出演者達の迫真の演技。
特に綾野剛と村上虹郎が剣を交える場面の臨場感はあまりにもリアルで、それぞれの気迫がスクリーンを通してビシビシ伝わってきました。
それはまさに魂と魂のぶつかり合い。
綾野剛の狂気がみなぎる圧倒的なオーラとそこにまっすぐ全力でぶつかっていく村上虹郎の戦う姿は、20世紀以降の日本映画史に残る決闘シーンといっても過言ではないと私は思います。

そして、ある意味常軌を逸したともいえる主演の綾野剛の演技にかける情熱。
綾野剛はたった1シーンのために壮絶な肉体改造を行い屈強な肉体美を披露していますが、それは作品のほんの一部。
剣士とは思えない粗暴な振る舞い、アルコール中毒の禁断症状に苦しむおどろおどろしさ、父との確執で揺れ動く心情、そして再生後の息をのむほどの端正なたたずまい。
スクリーンの中にいるのはもはや「俳優・綾野剛」ではなく、「主人公・矢田部研吾」のリアルな姿でした。
綾野剛本人の言葉を借りるなら、まさに研吾を生きた姿が、そこにはあったのです。
一つの役をここまで演じきったのは賞賛に値するし、そのプロ意識にはただただ頭が下がる思いでした。

この映画が描いているものは女には到底入っていけない、男同士の戦いの世界です。
研吾のバックグラウンドには父親との壮絶な確執・愛憎があります。
そこで苦しむさなかに出会った一人の少年と剣を交えることで自らの弱さと極限まで向き合っていくのです。
研吾の父の身に起こった出来事やそのときの父の思いを知ったとき、そして圧巻のラストシーンには打ちのめされるばかり。
見終わってからしばらく震えが止まりませんでした。

公開している劇場が少ないのが何とも残念ですが、あの「すごいものを見てしまった」感情は他のどの映画でも味わえないものでした。
戦う男たちの生き様を、ぜひとも劇場で体感してほしいです。

小説です。