映画「さようなら」の中で、アンドロイドは演劇の夢を見るか
２０１５年に発表された深田晃司監督による映画です。日本を代表する劇作家でもある平田オリザと、ロボット工学者の石黒浩がコラボレーションしたアンドロイド演劇が原作になっています。人間とアンドロイドがスクリーンの中で会話をしている奇妙な映画になっており、これからの創作活動の可能性についても考えさせられました。
舞台は放射能汚染が深刻な近未来の日本で、現実的に迫りくる危機を鋭く指摘しているストーリーです。国家権力が優先順位をつけて避難勧告を出していくシーンには、格差社会への痛烈な批判を感じました。一方では見捨てられてしまった人たちに、監督は優しさを持ってカメラを向けていました。壊れゆく世界を映し出していくことによって、今の時代の流れに鋭いメッセージを送っています。いつかは亡くなってしまう運命にある人間と死ぬことを知らないアンドロイドの存在を通して、初めて生命の意味について考えることができるのかもしれません。
